ヨーロッパ沖で、シャチが船を襲撃する事件が後を絶たない。沈没するケースも多く、船員たちはSNSで独自の対処法について情報交換している。ところがどれも科学的根拠はなく、水中生物に危害を加えかねないものも。専門家たちも手探りなのが現状だ 。
ヨーロッパ南西部、ポルトガルやスペイン沖で、シャチが船を襲撃する事態が相次いでいる。
シャチは船の沈め方を学習しているようで、2020年からの報告は500件を超える。頻度は増えており、2022年は5カ月で200件以上の報告があった 。
専門家いわく、船に体当たりしたり、舵に噛みついたりするシャチのこういった行動は「とても稀で、この海域でしか報告されていない」という 。
シャチへの対処に頭を抱えているのは、海洋学者たちだけではない。身の安全や仕事に関わるため、地元の船員たちにとっては深刻な問題だ 。
Facebookには「Orca Attack Reports(シャチ襲撃報告)」というグループが作成され、約6万人のメンバーがシャチの出現場所や独自の対処法など、日々情報を交換している 。
その中で注目を集めている撃退法が……「水中のスピーカーから大音量でヘビーメタル音楽を流す」。
「(シャチの襲撃を)恐れている。何が効果的で、何が効果的でないのか、誰にもわからない」と、ある船員は述べた。
情報交換の場は拡大している。元船員のルイ・アウヴェスさんは、専用サイトOrcas.ptを立ち上げた。ニューヨーク・タイムズによると、2022年の開設時、登録者は10人だったが、いまは2000人以上が利用している 。
イギリスのクルージング協会「Cruising Association」も、船員や研究者たちと協力し、専門ページで最新情報を提供している 。
ところが、巷で飛び交っている対策の中には、爆竹を海に投げるなどシャチやその他の水中生物に危害を加えかねない案もあり、一部の船員は対応が過激化しないか懸念している 。
現時点では、なるべく浅瀬を航行し、シャチの姿を確認したらできるだけ早くその場を離れるというのが、当局や研究者が出している唯一の対処法だ 。