イスラエルとハマスの軍事衝突以降、パレスチナ自治区のヨルダン川西岸地区でも暴力が激しさを増している。パレスチナ農民を支援するイスラエル人活動家が、実情を語った 。

イスラエル軍と、パレスチナのイスラム組織ハマスとの衝突が続いている。一般人が巻き込まれ、死傷者が後をたたない現状は広く報じられている通りだ 。

パレスチナ自治区のガザでは、イスラエル軍による地上侵攻が進んでいる。衝突の影響を受け、同じパレスチナ自治区の別地域「ヨルダン川西岸地区」でも、イスラエル人の入植者による暴力が増加しているという 。

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ヨルダン川西岸地区:「自治区」といえどイスラエルが実効支配

イスラエル政府は、パレスチナ自治区に自国の市民を移住させるという入植政策をとっている。政府は、西岸地区に移住した入植者に対し、住宅や教育、イスラエル国内までの交通を提供している 。

一方、パレスチナ人に対する政策は厳しい。国際社会の意見に反しイスラエルはその違法性を否定しているが、パレスチナ人の家や土地を奪い、道路の通行を禁止するほか、電気や水などのインフラを断つなど、生活が困難な環境に追い込んでいる 。

壁の建設で進む分断

2002年から、イスラエルと西岸地区を隔てる巨大な分離壁が建設されている 。

分離壁は、イスラエルと西岸地区の境界線を超えて、イスラエル人専用の道路や、入植者が暮らす土地とつながっており、パレスチナ人の村を飛び地状態に分断している 。

国連人道問題調整事務所によると、イスラエルとハマスの軍事衝突以降、西岸地区における入植者の暴力行為が倍増したという 。

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家を襲い放火…。入植者が集団で暴力、死者100人越えか

一部のイスラエル人入植者が、パレスチナ人の家を襲い、破壊行為や放火といった暴力行為をはたらく事態が相次いでいる。1000人ほどの入植者がガソリンを持って集まり、パレスチナ人の村を丸ごと焼き払う事件もあった 。

入植者による1日あたりの暴力事件は、10月6日まで平均3件だったのに対し、ハマスが突如イスラエルを攻撃した10月7日以降、平均7件にまで増えている 。

時事通信によると、11月6日の時点で、イスラエル軍や入植者との衝突により、110人以上のパレスチナ人が命を落としている 。

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イスラエル人活動家の思い「支援はないに等しい」

アリク・アッシャーマンさんは、イスラエルと占領地の人権保護活動に取り組むイスラエルの団体「人権のためのラビ(Rabbis for Human Rights)」の事務局長だ 。

アルジャジーラによると、ヨルダン川西岸地区に暮らすパレスチナ人のうち、8万〜10万世帯が、オリーブやオリーブオイルの生産を主な、あるいは二次的な収入源として暮らしている 。

入植者による暴力は、オリーブ収穫期に増加する傾向にあるため、「人権のためのラビ」は収穫期にオリーブ園にパレスチナ農民と同行し、入植者から保護する活動に励んでいる 。

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アッシャーマンさんは、アルジャジーラのインタビューで、ヨルダン川西岸地区における暴力と、自身の思いを語った 。

「 ハマスがイスラエルに対して行ったことについては、なんの言い訳も、説明も、正当化もできない 」

「 でも今や、一般的なイスラエル人は、パレスチナのテロリストと、テロの恐怖に怯えているパレスチナ人を区別しようとしていない 」

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アッシャーマンさんは、28年間、活動に従事している。「消極的」だとは言うが、活動に賛同して支援してくれるイスラエル人も多くいたという 。

「 いまはもう、そういった人々はいなくなった。支援はないに等しい 」

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