連載開始から11月20日で39周年。世界的な大ヒット作の知られざるトリビアを紹介します 。

累計2億6000万部の世界的な大ヒット漫画『ドラゴンボール』。連載開始から今日で39年を迎えました。知られざるトリビアを振り返りましょう 。

突然身長が伸びた悟空を見てびっくりした少年時代の記憶

1984年11月20日に発売された週刊少年ジャンプで『ドラゴンボール』の連載がスタート。前作の『Dr . スランプ』が3カ月前に終了したばかりで期待感が大きかったこともあり、表紙には「ヒットメーカー鳥山明戦列復帰!!」という煽り文句。主人公の孫悟空とブルマが描かれていました 。

ここに描かれている悟空は、3頭身のかわいらしい姿です。悟空は連載初期の第165話までが2頭身でしたが、第166話で突然身長が伸びて7頭身ぐらいの姿になります。最終回の第519話までこの身長でした 。

単行本14巻に収録されている第166話「それぞれの再会」は、週刊少年ジャンプ1988年16号に掲載されました 。

Article image

youtube.com

ピッコロ大魔王を倒したあと、神様の元で3年間修行を積んできた悟空が久しぶりにブルマらと再会し、天下一武道会に参加するという内容でした 。

小学5年生だった自分はこの号を読んで、いきなり悟空の身長が伸びたことにビックリしました 。

たった3年間で急成長したことにも驚いたのですが、前作『ドクタースランプ』の主人公アラレちゃんと同じ3頭身の悟空に親しみを感じていたので、急に青年の姿になった悟空に違和感を持ったのでした 。

Article image

「これだとアクションが描けない」作者の鳥山明さんの判断だった

一体、あれは何だったのだろう ?

今年8月、ふと気になってX(旧Twitter)でフォロワーに尋ねてみたところ、『ドラゴンボール』ファンのペキンさん(@pekindaq)から「鳥山先生が三頭身では手足のリーチが無くこれ以上のアクションは描けない」という判断で成長させた」という逸話を教えてもらいました 。

なんと、そんな判断があったとは。2014年7月にNHK Eテレで放送されたSWITCHインタビュー 達人達(たち)「鳥嶋和彦×加藤隆生~ヒットを生むコツ!」で、担当編集者だった鳥嶋和彦さんが語っていたそうです 。

Article image

この番組を見ることは今は困難ですが、資料を調べていくうちに鳥嶋さんが今年7月に『Dr . マシリト最強漫画術』(集英社)を出しており、悟空の身長が伸びた件を、作者の鳥山明さんとの対談で振り返っていることが分かりました 。

この本の中の鳥嶋さんの回想によると、当初は7つ集めると願いがかなう「ドラゴンボール」の争奪戦を描く冒険活劇として始まりましたが、第3話くらいから人気が落ち始め、読者アンケートでは「連載作品20本中真ん中くらいの順位になって黄色信号が点滅」し、連載打ち切りの危機が迫っていたそうです 。

そこで受け身だった悟空のキャラを「強くなりたい」と願う主人公に再定義し、第24話からはサブキャラクターを亀仙人以外は全て一度捨て、新たに「悟空の存在を際立たせる対照的なライバル・クリリン」を登場させました 。

マリー・アントワネットの肖像画。1783年にヴィジェ=ルブランが描いた物(Getty Images)

悟空が亀仙人の元で修行することで人気はV字回復。第33話から始まった天下一武道会の途中で読者アンケートでトップを獲得しました 。

こうして『ドラゴンボール』がバトル中心の展開になっていく中で、鳥山さんから悟空の身長を伸ばしたいという提案があったそうです。この本に掲載された2人の対談では、以下のようなやり取りがあります 。

——–鳥嶋その後で、今度は小さい等身(原文ママ)の悟空では無理だと。「これだとアクションが描けない。だから等身(原文ママ)を大きくしたい」って。俺は反対したの。鳥山すごい反対されましたよ。鳥嶋だってせっかく苦労して悟空を売り込んだのに、それを変えるわけだよ。こんなに怖いことはない。でも「そうしないと連載は続けられない」って。それで編集長に話をしたら、「いいじゃん別に。そうしたいんなら」って冷たく言われて。鳥山興味なかったんだね。鳥嶋そうだね(笑)。俺はものすごく心配で、大きくなった悟空の掲載号が発売される日の午後、抗議の電話が来るんじゃないかって編集部で待ってたのよ。でも大人からの電話が一本だけ。アンケート人気も何も関係なく1位で、びくともしなかった。——–

1954年の初代『ゴジラ』の宣伝用写真(Getty Images)

担当編集者の反対を押し切って悟空の身長を伸ばした鳥山さん。低身長のままだと「アクションが描けない」という判断があったようです 。

悟空の身長が伸びたのは、ピッコロ大魔王との戦いの直後でした。この「ピッコロ大魔王編」からは、『ドラゴンボール』は初期のギャグ路線は陰をひそめ、仲間の死などが描かれたシリアスなバトル漫画へと変化していきます。バトルアクションを続ける上で、悟空の身長を高くすることが必須だったんですね。やっと長年の疑問が解消できました。それにしても抗議の電話が1本だけとは … … 。当時の子どもたちが気にしてなかったのは意外でした 。

3頭身の悟空が復活!2024年秋に世界展開予定の『ドラゴンボールDAIMA』とは

もう過去の物になって久しい「3頭身の悟空」ですが、なんと2024年の新作で復活することが決まりました。それが40周年記念作品『ドラゴンボールDAIMA(ダイマ)』です。2024年秋に世界展開されることが10月13日、ドラゴンボール公式サイトで発表されました 。

YouTubeにアップされたティザー映像を見ると、悟空の身長がみるみる小さくなって、かつての3頭身の姿に戻る様子が描かれています。原作者の鳥山さんは「ある陰謀で悟空達はなんと小さくなってしまいました」「悟空は体の小ささを補うために久しぶりに如意棒を使っての戦闘が懐かしいかも」と公式サイトにコメントを寄せています 。

ストーリーの都合で悟空の身長を伸ばした鳥山さん自身も、初期のかわいらしい悟空の姿に愛着があったのかもしれませんね 。

Article image

おすすめ記事

Article image

Article image