「 殺せ」「殺されろ」という言葉はウクライナの人々ではなく、「戦争の本質を表現した」と釈明。その上で「つたない表現で誤解を招いてしまったことをお詫びします」と読者に謝罪しました 。
雑誌『通販生活』を発行するカタログハウス社は10月30日、公式サイトに読者に向けた謝罪文を掲載しました 。
同誌の最新号の表紙には、ロシア軍のウクライナ侵攻を猫のケンカになぞらえた上でウクライナに停戦を呼びかけるメッセージが載っており、在日ウクライナ大使館が猛抗議していました 。
戦争反対や原発反対を訴えてきた『通販生活』とは?
問題となった『通販生活』とは、1982年からカタログハウス社が出版している通販カタログの雑誌です。もともとは月刊誌ですが、現在の発行ペースは年3回 。
公式サイトによると、「商品は一にも二にも品質が大切」として品質重視の商品を紹介するほか、「買い物は平和な社会でなければ成り立たない」として、戦争反対や原発反対を訴えているそうです 。
猫の目線で「見習ってください。停戦してください」とのメッセージ
今回、話題となったのは10月10日から購読者に発送されている『通販生活』の2023年冬号です。表紙には、銃を構えて戦う兵士らの姿を映した液晶テレビを眺める猫の姿が描かれていました。その下には以下のようなメッセージが書かれています 。
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「 プーチンの侵略に断じて屈しないウクライナの人びと」「がんばれ、がんばれ、がんばれ。守れ、守れ、守れ。殺せ、殺せ、殺せ。殺されろ、殺されろ、殺されろ」「人間のケンカは『守れ』が『殺し合い』になってしまうのか。ボクたちのケンカはせいぜい怪我くらいで停戦するけど。見習ってください。停戦してください 」
ロシア軍のウクライナ侵攻を猫同士のケンカにたとえた上で、猫を見習ってウクライナの人々に停戦を求めるような内容でした 。
これに対してSNS上では「さすがに限度を超えています」「ウクライナの人々を愚弄しているようにしか見えない」「侵略をケンカに置き換えて、喧嘩両成敗に応じないウクライナ人が悪いように誘導する。それを猫目線で揶揄する性格の悪さ」などと非難する声が相次いでいました 。
在日ウクライナ大使館が猛抗議、その内容とは?
こうした中で、在日ウクライナ大使館も27日、X(旧Twitter)を更新。『通販生活』に対して猛烈な抗議を投稿しました。ウクライナに対する「侵略戦争」はケンカではなく、侵略者をなだめることは終戦に導かないとして、以下のように書いています 。
「 在日ウクライナ大使館はこのような呼びかけ及び例えを、日本国民及び日本政府の立場に矛盾するものとして強く非難します」「ロシアは侵略国家であり、ウクライナから直ちに撤退すべきです」「主権国家に対する侵略戦争はケンカではありません。侵略者を宥(なだ)めることは終戦に導きません 」
『通販生活』の版元がウクライナ大使館と読者に謝罪
こうした事態を受けて、『通販生活』を発行するカタログハウス社は10月30日、公式サイトに読者に向けた謝罪文を掲載しました 。
ウクライナの人々の祖国防衛の戦いを「ケンカ」という言葉で表現したことを「不適切」とお詫びする書面を同日、ウクライナ大使館に提出したことを明らかにしました。また、「殺せ」「殺されろ」という言葉はウクライナの人々ではなく、「戦争の本質を表現した」と釈明。その上で「つたない表現で誤解を招いてしまったことをお詫びします」と謝罪しました。「理がウクライナ側にある」「ロシアの侵攻は許されるものではない」として、雑誌としてロシア軍の侵攻を認める立場ではないとしています。カタログハウス社の公式サイトに掲載された謝罪文の全文は以下の通り 。
読者に向けた謝罪文の全文
「 通販生活」読者の皆様へ23年冬号の表紙へのお問い合わせについて「通販生活」23年冬号の表紙について、10月27日夜、ウクライナ大使館がSNS上で非難の声明を公表されました。それに対し本日、駐日ウクライナ特命全権大使のセルギー・コルスンスキー様宛に、ウクライナの皆様の祖国防衛の戦いを「ケンカ」という不適切な言葉で表現したことをお詫びする書面をウクライナ大使館にお渡ししました。また、読者の皆様から、表紙にある「殺せ」「殺されろ」は、「ウクライナの人びと」への言葉なのかというお問合せも多くいただいています。「殺せ」「殺されろ」の主語は決して「ウクライナの人びと」ではなく、戦争の本質を表現したつもりです。どちらの側に理があるにせよ、「殺せ」は「殺されろ」の同義語になってしまうから、勃発した戦争は一日も早く終結させなくてはいけない。そんな思いを託して、このように表現しました。つたない表現で誤解を招いてしまったことをお詫びします。理がウクライナ側にあることは、巻頭特集「いますぐ、戦争をやめさせないと」を読んでいただければおわかりいただけると思います。申し上げるまでもなく、私たちはロシアの侵攻は許されるものではないと考えています。ウクライナ、そしてパレスチナ・ガザ地区において一日も早い平和が訪れることを願い、これからも非戦の特集に取り組んでまいります。2023年10月30日株式会社カタログハウス代表取締役 斎藤憶良「通販生活」編集人(読み物 ) 釜池雄高